大阪高等裁判所 平成10年(ネ)353号 判決 1998年9月01日
主文
一 原判決を次のとおり変更する。
1 被控訴人は控訴人Y1に対し、金四五四八万四九七〇円及びこれに対する平成九年三月一日から支払済みに至るまで年一割五分の割合による金員を支払え。
2 被控訴人は控訴人Y2に対し、金一四二八万五〇三〇円及びこれに対する平成九年三月一日から支払済みに至るまで年一割五分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
理由
一 当裁判所は控訴人らの本訴請求は理由があるものと判断するが、その理由は次のとおり付加、訂正するほか、原判決「理由」記載のとおりである。
1 原判決一二頁六行目の「丙第四号証」の次に「原審における被控訴人本人尋問の結果」を加える。
2 同一三頁六行目から同一七頁三行目までを次のとおり改める。
「(二) ところで、訴外会社が本件和解において控訴人Y1に対し支払うことを約束した金八三七一万円、同Y2に対する金二六二九万円は、亡Aの死亡退社による持分払戻金として交付される金銭であって、これは所得税法二五条二項に定めるみなし配当に該当する控訴人らの所得であるから、すると、同法一八一条一項により、訴外会社は、控訴人らに支払う和解金につき源泉徴収義務が生じていたものといわねばならない。
(三) しかしながら 所得税法が配当所得や給与所得等の所得について納税者が申告をすることなく、これらの支払者が所得税額に相当する金額を支払金額から控除してこれを納付すべき旨定めているのは、本来納税者自身が所得申告をして納付すべき所得税を、国において確実かつ便宜に徴収するための徴税技術上の理由に基づくものであって、所得税法上の右仕組みによって、私人間の権利義務関係に関する民事上の合意とその履行が制限されると解すべき根拠はないし、本件和解は源泉徴収にかかる所得税分を和解金の支払い時に留保するなどの約定はなく、端的に訴外会社から控訴人らに対して前記金員の支払いを約束しているものである。
被控訴人が本件和解にかかる控訴人らに対する支払金員につき、所得税法上の源泉徴収義務による税額を既に納付したのであれば格別、被控訴人からそのような主張立証がない本件においては、被控訴人が源泉徴収義務を負っていることを理由に本件和解金の一部の支払いを拒絶することは許されない。」
3 同一八頁六行目の「(税金関係については、前記のとおりである。)」を削る。
4 同一八頁八行目から同一九頁二行目までを次のとおり改める。
「よって、控訴人らの請求は全部理由がある。」
二 以上によれば当裁判所の右判断と結論を異にする原判決は取消しを免れず、本件控訴は理由がある。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 永井ユタカ 裁判官 宮本初美)
裁判長裁判官 蒲原範明は差し支えのため署名押印できない。
(裁判官 永井ユタカ)